前回の講習会・勉強会では,ここまでの処理で軌道縞がほとんど残っていない干
渉画像が得られていた。しかし,今回の画像では4フリンジ以上の軌道縞が残って
いる。以下では,これを除去するために試行錯誤を行う(今回の講習会での内容)。
まず,干渉性が悪かったために,”9”で低周波ノイズのスペクトルをうまく決
められなかったことが原因である可能性について調査する。 -> ”10”へ
低周波ノイズがX(レンジ)方向に2次,Y(アジマス)方向に1次の関数で近似でき るとする。この近似は,以上で得られた結果のように,ほぼ軌道縞が除去できた場合に 適用できる。画像全体で位相差が平坦になるようにこの関数のパラメータを決定する。 この処理に用いたプログラム(fortran)を早急にほしい方は,個人的に小澤@防災科 研に相談してください(たいしたプログラムではないですが)。
以上が最終結果です。一般に,このようなデータを入力値として,インバージョ ン解析等が行われています。今回得られた結果では,タール火山のカルデラの北西 部に10cm近い地殻変動パターンが見られますが,実際には,これほど大きな地殻変 動は生じていないと推測しています。これは解析者(私)がSIGMA-SARによる解析 ノウハウを習熟していないため,このように解析が難しい干渉ペアにおいてはパ ラメータの調整が不十分となり,低周波ノイズが残ってしまったためと考えていま す。私が使い慣れているGAMMA SAR processorを用いると,このパターンは数cm程 度になりますし,Mac版のSIGMA-SARの解析でも同様です(なぜこのような差が出た かは不明)。数cm程度の大きさであれば,水蒸気ノイズである可能性も考えられま すが,火山活動が活発な時期のデータですから,実際の地殻変動である可能性も捨 て切れません。それを調べるためには,他の干渉ペアを調べるとか,他の観測デー タと照らし合わせて,実際の地殻変動かどうかを確かめる必要があります。